病み上がりが教えてくれる身体の声

病み上がりになると、普段は無視している細かな信号がよく見えるようになる。熱、だるさ、呼吸の浅さ、筋肉の重さ、関節の違和感――こうした小さな声を無視し続けると、後で必ず帳尻が来る。だから私は、病み上がりの期間を“身体が教えてくれる時間”だと捉えている。

まず分かったことは、回復は短期決戦ではなく積み重ねであるということだ。激しく動ける日もあれば、ただ深呼吸を繰り返すだけの日もある。それでも1ミリの前進は存在する。休むことも動くことの一部だと理解すれば、無理に元に戻そうと焦る必要はなくなる。身体は休ませた分だけ、確実に応えてくれる。

次に、回復期に有効なのは「質の低い負荷の継続」。フルセットを求めず、負荷を絞ってでも継続する。筋トレなら回数を減らしフォームに集中する。開墾作業なら重労働を避けて道具の手入れや観察に時間を割く。こうした“負荷の質の調整”が、早期の再起動を可能にする。

栄養面では、たんぱく質と水分を優先する。病み上がりは修復モードに入っており、入口を確保しておけば回復曲線は滑らかに上がっていく。睡眠は短い時間でも深度を上げることを意識する。昼に短い昼寝を挟めるなら、回復効率は劇的に上がる。

呼吸と動線の見直しも有効だ。深呼吸で迷走神経を刺激し、心拍と筋緊張を整える。作業の合間に呼吸をリセットするだけで、身体の疲労感は軽くなる。動線を見直して無駄な移動や同じ筋群への繰り返し負荷を減らすと、回復に使えるエネルギーが増える。

最も大事なのは「自分の声を信頼すること」。医師の指示やデータは大切だが、普段から自分の身体に向き合ってきた者は、自分の声を無視してはいけない。痛みや違和感は単なる障害ではなく、修正点のヒントだ。そこに素直に従えるかどうかで、回復速度と質は変わる。

病み上がりは弱さの時間ではなく、身体と対話するための時間だ。焦らず、しかし怠けず、1ミリずつ前進する。その積み重ねが、以前よりも強い身体を作る。それは筋力の数値だけでなく、疲労の回復力や動作の精度にも現れる。私はそういう身体を目指しているし、病み上がりの声を聞くたびに、その方向を微調整していく。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA