竹林の見方が変わった瞬間|10か月の整備で身についた観察力
竹林整備を始めた頃、私は「太い竹を切らない」「細い竹を倒す」くらいの感覚で作業していました。しかし、10か月ほど毎週のように竹と向き合っているうちに、竹林がまったく違う風景に見えるようになってきました。
竹林はただの“竹の集合体”ではなく、
一本一本が違い、一年ごとに生まれ変わり、地下では複雑なつながりを持つ生態系でした。
今回は、私がどう竹林を“見られるようになったか”、その変化をまとめます。
1. “太いか細いか”だけでなく、竹の年齢が読めるようになった
竹は1年目・2年目・3年目で色が違い、節の状態も変わります。
以前はどれも同じに見えていましたが、今は次のように区別できます。
- 1年目の若竹:色が明るく、節がくっきり
- 2〜3年目の成竹:色に深みが出てくる
- 4年目以降の古竹:表面に粉、傷、黒みが増える
この“年齢の見極め”ができるようになると、
切るべき竹と残すべき竹が一目で判断できるようになりました。
2. 地下茎の伸び方がイメージできるようになる
竹林整備を続けていると、倒す前に竹の“地下の姿”が浮かぶようになります。
- 同じ方向に並ぶ竹は、同じ地下茎の系統
- 曲がり竹の背後には日光の弱いエリアがある
- 細竹が多い部分は地下茎が弱っている
- 太い竹が連続している場所は栄養が集中している場所
これは一年中竹林に入って作業した結果、
地上の形=地下の状態が自然とつながった感覚です。
この視点が身につくと、間引きをする場所も迷わなくなります。
3. “風”と“光”の動きを見るようになった
竹林整備で最も大事なのが、
光の差し込み方と
風の抜け道です。
以前は気にしていませんでしたが、今は以下が自然と見えるようになりました。
- 上から光が落ちている場所=タケノコが育ちやすい場所
- 風が抜けるライン=倒れる方向も予測しやすい
- 光が弱い部分=負け竹が増えるエリア
光が刺す瞬間に、竹の輪郭が強調されて、竹林の「骨格」が分かるようになります。
これを基準に整備すると、竹林全体のバランスが一気に良くなるのを実感します。
4. “竹林の疲労”が見えるようになった
竹林にも“疲れ”があります。
- 葉のボリュームが少ない
- 幹の色がくすむ
- 同じ場所に細いたけが密集
- 枝先が弱々しい
- 根元が黒ずむ
これらは地下茎が弱っているサイン。
逆に、健康な竹は立ち姿が力強く、葉が密で、色に艶があります。
この差を見抜けるようになると、
竹林全体の健康診断ができるようになる。
ここから間引きの精度が大きく変わりました。
5. 自分の“視点の変化”そのものが楽しくなった
10か月前はただ“作業として竹を切っていた”だけでした。
しかし今は、竹林が立体的に見え、一本一本が役割を持っているように感じます。
- 元気な竹は残す
- 役目を終えた竹は間引く
- 新しいタケノコが生える空間を作る
竹林は、整備するこちら側にも“観察力”や“美意識”を要求してくる存在です。
ただ作業をこなすだけでなく、
竹林を見る自分自身の変化まで感じられるところが、この整備の面白さだと思います。
まとめ:竹林は見る力が育つほど、整備が楽しくなる
10か月整備してきたことで、私は竹林を
- 年齢
- 健康状態
- 地下茎のつながり
- 光の入り方
- 風の抜け道
で見るようになりました。
これは技術というより、
竹と向き合ってきた時間が自分の“視界”を育ててくれた結果だと感じています。
竹林整備は、“木を見る作業”から“森を見る作業”へと変わり、
その視野の広がりが、そのまま作業の喜びになっています。