無職になって“満点の星空”を見に行った|徳島・剣山で人生初の宇宙体験
会社を辞めて時間ができたとき、
「自分が本当にやりたかったことは何だろう?」
と考えました。
その中で真っ先に出てきたのが、
“満点の星空を見たい” という願望でした。
子どもの頃、父が
「いつかお前に満点の星空を見せてやりたい」
と言っていた言葉がずっと心に残っていたからです。
その“いつか”を、自分の手で実現する時が来たのです。
1. 日本で“最も暗い場所”を探すと、剣山に行き着いた
星空は明るい場所では見えません。
街の灯りが空を打ち消す「光害」があるからです。
調べたところ、
日本で最も暗い場所の一つが徳島県の剣山。
標高約2000m。
光害の影響が少なく、
夜空を見上げれば宇宙が“丸ごと降ってくる”ような場所です。
剣山山頂には「ヒュッテ」があり、宿泊も可能。
素泊まりで1万円ほどと手頃。
(ただし、小屋なので快適さは期待してはいけません)
2. 冬の剣山は“本物の山”|準備不足だと危険
私が訪れたのは11月。
すでに積雪の可能性があり、
山小屋の人からも「寒さは覚悟してください」と言われました。
✔ 雪用タイヤ必須
✔ 道中凍結の可能性あり
✔ ロープウェイも天候で止まる
✔ 山頂は氷点下
冬山は舐めてかかると危険ですが、
装備さえ整えれば安全に楽しめます。
私はいつもの“相棒”であるウェットスーツを採用。
■ 服装
- パーカー
- スラックス
- その下にウェットスーツ(5mm)
これが驚くほど万能で、
氷点下の剣山でも身震いすることなく過ごせました。
3. 山小屋の暮らしで痛感した“現代文明のありがたさ”
剣山の山頂ヒュッテは、
自然と共存するために独自のルールがあります。
- 水は節約のためトイレは流さない
- トイレットペーパーと汚物は分別
- 電気は最低限
- 給水設備も限られている
平地では何の疑問もなく使っている
“水・電気・暖かさ” のどれもが
山頂では貴重品。
普段、どれだけ文明に甘えているのか、
深く実感しました。
宿の方の努力と苦労を目の当たりにし、
少額ですが寄付をさせていただきました。
4. 山頂のロッジで寝そべりながら見た“満点の星空”
夜になり、外に出て空を見上げた瞬間――
言葉を失いました。
無数の星が空一面に散らばり、
静寂の中でゆっくりと瞬いている。
普段の生活では絶対に見ることのできない光景。
そして不思議なことに、
“星空を見ている”というより、
“宇宙の中に自分が溶け込んでいる”ような感覚になりました。
寒さも忘れ、
2時間以上ずっと空を見上げていたと思います。
ただただ、良かった。
その一言に尽きます。
5. そして迎えた日の出|静かで厳かで豊かな時間
朝、東の空が薄く明るくなり始めると、
星が静かに消えていきます。
夜の宇宙から、
太陽の世界に戻る瞬間を初めて意識しました。
日の出の光は、
心を深い場所から照らすようでした。
6. 父の言葉が消えた瞬間
父がよく言っていた一言。
「いつかお前に満点の星空を見せてやりたい」
その言葉が心に引っかかったまま
大人になり、父になり、無職になり、ここまで来た。
剣山で星空を見上げていたとき、
ふと気づいたのです。
「あの言葉は、もう胸の中に残っていない」
自分の力で、自分の足で、
“父が見せたかった景色”を見たから。
あの時、心のどこかで
父の未完の約束を完了できた気がしました。
7. 前日のプラネタリウム“予習”が最高のスパイスだった
旅行前日に、
プラネタリウムで星の知識を少し仕入れました。
これが大正解。
- 星座の動き
- 季節の配置
- 天の川の見え方
- 明るい恒星の位置
これを知った状態で剣山に行くと、
夜空を読めるようになり、楽しさが倍増します。
星を見るなら、
プラネタリウムでの予習は必須 と断言します。
8. 家族が“ワンマン旅行”を許してくれたことへの深い感謝
子どもがいる身として、
1人で旅行するというのは
決して当たり前ではありません。
行かせてくれた家族に深く感謝しています。
あなたが応援してくれたから、
私は人生で一度の体験ができました。
まとめ|無職になって得た自由は、心に残る景色へとつながった
仕事を辞めることは勇気がいります。
でも、あの星空を見たとき、
「人生でこういう時間を持つために辞めたんだ」
と素直に思えました。
無職の自由は、
ただ遊ぶためのものではありません。
心の奥に残る景色を見るための自由 です。
剣山の星空は、
私の人生の宝物になりました。