会社員10年目、刺激の薄れた日々の中で出会ったもの|観葉植物と干し芋づくりの話
会社員を十年以上続けていると、
良くも悪くも “未来が見えてくる”。
今日やる作業も、
来週の段取りも、
一年後の自分の動きも、
ある程度予測できてしまう。
それは安定とも言えるが、
刺激が少なくなり、
心のどこかに“物足りなさ”が積もっていく。
そんな時期に、
なぜか観葉植物と干し芋づくりに手を出した。
副業というより、
ただの好奇心だった。
今思えば、
あの頃の自分は「何か新しいもの」に触れたかったのかもしれない。
## 観葉植物にのめり込んだ時期
ネットショップ(BASE)を作り、
そこで観葉植物を販売できないか試していた。
扱った品種はこんな感じだ。
- シュロチク
- ディフェンバキア
- ドラセナジュレ
- トックリラン
- ユッカ
- オーガスタ
- ポリシャス
会社の帰りにホームセンターで苗を買い、
家で株分けをして増やせないか挑戦したり、
挿し木にチャレンジしたり、
全館空調の安定した環境で「室内生育の最適解」を探したり。
育苗棚も自作して、
光量を調整しながら育てた。
ただ、結果は失敗の連続だった。
挿し木に使う保護液をケチったせいで根が出ず、
株分けも丁重に扱わないとすぐ弱ってしまう。
育苗ライトのルーメンも不足して、
「やっぱり太陽は偉大だ」と痛感した。
植物は正直で、
こちらの小さな怠慢をすぐに見抜く。
そんなやり取りをしながら、
結局、観葉植物の販売は断念した。
## 次に挑戦したのが“干し芋づくり”
観葉植物で得た“学び”を持ったまま、
次に試したのが干し芋。
こちらは再現性が高かった。
■ 作り方はシンプルだ
- さつま芋1kg
- 水500cc
- 炊飯器の玄米モードで茹でる
- 皮をむく
- フードドライヤー30℃で48時間
すると、きれいな干し芋ができる。
味も良く、見栄えも悪くない。
しかしここにも落とし穴があった。
■ 完成した干し芋の重量は半分
1kg → 500gになる。
販売価格を考えると赤字になる。
商売としては成立しなかった。
ただ、この過程で
食品衛生責任者の資格を取り、
保健所にも届出を出すことになった。
会社員をやりながら、
手続きして、勉強して、失敗して、
それでも続けていた自分は
今思えばなかなか頑張っていた。
## 振り返ると、失敗は全部“前に進む材料”だった
観葉植物も、
干し芋づくりも、
商売としては成功ではない。
でも、
あれがあったから今の自分がいる。
- 観察する力
- 継続する力
- 調べる力
- 工夫する力
- 低コストで回す発想
- 計画を立てる癖
- 小さな改善に気づく感性
全部、今になって役に立っている。
当時は気づかなかったが、
“遠回りに見える道”の中に
成長が埋まっていた。
そして不思議なもので、
今の自分なら、あの頃よりずっと上手く回せる自信がある。
経験を積めば、
人は勝手に前へ進む。
少しずつ、でも確実に。
## あの頃の自分に言いたいことがある
「よくやってたよ」と。
会社員としてルーティンをこなしながら、
その合間で自分の世界を広げようとしていた。
あの積み重ねがあったから、
今こうして2000㎡の放棄地を開拓し、
竹を切り、土を耕し、
自分の手で生活をつくっている。
人は失敗しながら成長していく。
その言葉が今なら素直に理解できる。